漢文を書くときの大まかな決まり、言葉の順番について

漢文を書くときのルールみたいなのつてあるの?

後輩

先輩

漢文法のこと? まああるけど、それぢやあ今日はそこの所を紹介しませうか
漢文法…。 難しさう…。

後輩

先輩

最低限氣をつけるべきことだけにしとくね

ルールと言つても、それほど難しい話ではないので氣樂きらくにいきませう。

 

▼前の記事

書く前に押さへておきたい、漢文の特徴とは?書く前に押さへておきたい、漢文の特徴とは?

 

書きたいことを書かう

人工的な側面があるとはいへ、漢文も筆記言語です。

みなさんの書きたいと思つてゐることを、思つたまま書きませう。

でも、正しい文法に從はう

すべての言語に文法があるやうに、漢文にも漢文法といふ決まりごとがあります。

昔、日本人が漢詩を作つて中國人ちゆうごくじんに贈つてみたところ、作詩作文のルールを無視してゐたためにへん空氣くうきになつたといふ話があります。

参考 漢詩もどき窮々自適
先輩がたまに變なLINEスタンプを送つてくるみたいな?

後輩

先輩

こらこら

 

詩と文はまた微妙に違ふので一概には言へませんが……

思つたまま書くといつても、やはり適當てきたうに書きすぎるのは宜しくないやうです。

 

漢文法といふ難しさうな言葉が出ましたが、べつにそんなことはありません。

しよせんは人間の産物。

同じ人間である我々に理解できない道理はありません。

 

語順に關する、もう少し噛み碎いた解説

頭に浮かんだ順に書いていく

たとへば頭の中で「私は日本人です。」といふ文章をイメージしたとします。

これを漢譯かんやくしてみませう。すると……

日:私は日本人です。 漢:我日本人。

日:私は日本人です。 漢:我日本人。

そのまんまやんけ!

後輩

そのまんますぎて拍子けです。

 

  1. 「私」が居て、
  2. 「日本」といふ地名を提示し、
  3. 「人」を日本とつなげて所屬しよぞくを表す。

ちやうど出來事の順番になつてゐますね。

 

じつさいに書いてみる

さて、それでは筆記用具を持つて、他の事を漢文で書いてみませう。

  1. 夜眠つて朝起きる。
  2. 互ひにたたかつて大いに勝つた。
  3. これは本當ほんたうに重要なのか?

先輩

「互ひに」は「相」、「これ」は「是」、「本當ほんたうに」は「誠」、「~か?」は「~乎?」の字を使つてみてね。

 

 

日:夜眠つて朝起きる。 漢:夜眠朝起。

日:夜眠つて朝起きる。 漢:夜眠朝起。

日:互ひに戰つて大いに勝つた。 漢:相戰大勝。

日:互ひに戰つて大いに勝つた。 漢:相戰大勝。

日:これは本當に重要なのか? 漢:是誠重乎?

日:これは本當に重要なのか? 漢:是誠重乎?

先輩

べつに「是誠重要乎?」としても大丈夫よ。「是誠重乎?」と書いたのは、その方が簡潔だと思つたから。簡潔性についての話は以前の記事で説明したから見てみてね

 

これが漢文のいちばん素直な形です。

書きたいことを左から右へスラスラ書いていく。

まるで、ひらがなカタカナの無い日本語のやうですね。

樂勝~!

後輩

 

漢文特有の決まりごとによる語順

先輩

さうはいつても、日本語とは語順が違ふ場合もあるわ
うぐぅ……

後輩

先輩

吐血しないの。逆にそこさへクリアしてしまへば、漢文で多くのことを表現できるやうになるからね

 

ためしに以下の文を漢譯かんやくしてみませう。すこし多いですが、ひとつひとつの文は短いです。

  1. 志を言ふ。
  2. あなたに志を言ふ。
  3. なにを言ふ?
  4. 言はない。
  5. 言ふべきだ

 

先輩

「あなた」は「汝」、「なに」は「何」、「~ない」は「不」、「~べきだ」は「可」の字を使つてみてね

 

 

日:志を言ふ。 漢:言志。

日:志を言ふ。 漢:言志。

日:あなたに志を言ふ。 漢:言汝志。

日:あなたに志を言ふ。 漢:言汝志。

日:なにを言ふ? 漢:何言?

日:なにを言ふ? 漢:何言?

日:言はない。 漢:不言。

日:言はない。 漢:不言。

日:言ふべきだ。 漢:可言。

日:言ふべきだ。 漢:可言。

なんか釋然しやくぜんとしないやつがある…!?

後輩

 

 

 

それでは以下、書いていきます。

 

動詞は賓語(ひんご:目的語のこと)の前に置く

日:志を言ふ。 漢:言志。

日:志を言ふ。 漢:言志。

賓語ひんごとは、目的語のこと。このサイトでは漢文における目的語のことを賓語と言ふことにしてゐます。

 

漢文では、動詞が賓語をとる場合、日本語と順番が逆になります(この順番が逆になることを「倒置」といひます)

上の畫像ぐわざうでも、せんがクロスしてゐますね。

 

  • 行京(京行く)
  • 免費(費用免ず)
  • 爲王(王なる)

3つばかり例文をげてみました。すべて日本語と逆。

 

日本語で動詞が目的語をとる場合、助詞の「を・に・と」などが付きます。

つまり日本語で「を・に・と」が出てきた場合、それを漢譯かんやくするときは逆にしませうといふことです。

先輩

鬼と(ヲニト)つたら返る」でおぼえてね

 

 

賓語が2つある場合
日:あなたに志を言ふ。 漢:言汝志。

日:あなたに志を言ふ。 漢:言汝志。

もちろんどちらの賓語も動詞の後ろになります。

問題はその順番ですが、このへんの事情を書かうとすると、どう考へてもこのページにをさまりきらないので、また別の機會きくわいにお話しませう。

先輩

ここではとりあへず賓語がいくつあつても、動詞の後ろとだけおぼえておいてね

 

「何」などの疑問詞は1周囘る

日:なにを言ふ? 漢:何言?

日:なにを言ふ? 漢:何言?

???

後輩

もつと奇妙なのが疑問詞の文です。

疑問詞の代表格は「何」で、文字通り「なに? どこ?」などの意味を表します。

ほかにも「安・孰」などありますが、長くなるのでここでは書かないでおきます。

 

この疑問詞が賓語にくる場合、倒置します。

つまり日本語と逆の語順になるものが、もういちど逆になり、1周囘つて日本語と同じになるわけです。

 

筆者は長い間この疑問詞の倒置現象にづけず、苦勞くらうしました。

 

否定詞は否定されるものの前に置く

日:言はない。 漢:不言。

日:言はない。 漢:不言。

これは何となく解つたよ! 「不可能」「不純」「順不同」とか言ふもんね~!

後輩

先輩

勘のいい後輩は嫌ひよ

 

否定詞にくわんしては、英語と語順がほぼ同じらしいです。しらんけど。

否定詞には「不・非・勿」などがあり、他にもたくさんあります。

全部紹介するとキリがないので、あまり深くは踏み込まないでおきます。

 

助動詞は動詞などの前に置く

日:言ふべきだ。 漢:可言。

日:言ふべきだ。 漢:可言。

「可・欲・敢」などが助動詞です。

助動詞もおくが深いので、またこんど詳しく書きたいと思ひます。

 

まとめ

なんかザックリと解つた氣がする! ザックリと!

後輩

先輩

それはよかつた。ここで書いたことだけで、書きたい内容の8割くらゐは表現できるからね

 

ただしここで説明したのは、あくまで文の組み立て方。

より良い文を書くならば、その時々で適切な字句を選ぶ必要があります。

そこらへんについても、いつかどこかで書きたいと思ひます。

 

▼文法的な話

漢文の基本的な形1 主語+謂語(述語)+賓語(目的語)

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