漢文の基本的な形1 主語+謂語(述語)+賓語(目的語)

先輩

漢文は語順が大切だつて、この前言つたわよね。おぼえてる?
漢文を書くときの大まかな決まり、言葉の順番について漢文を書くときの大まかな決まり、言葉の順番について
…うん!

後輩

先輩

ぢやあ大丈夫ね。今日はより文法的な面から説明するわよ

 

今囘のキーワードはこちら。

主語 + 謂語ゐご + 賓語ひんご

べつに知らなくても感覺かんかくで書けるかもしれませんが、漢文を深く理解するには知つておいた方が良いでせう。

先輩

今囘の話は「讀む」時には大事になつてくるんだけど、書くときは意識しなくてもそれなりの文がかけたりするの

 

※謂語は述語のこと、賓語は目的語のこと。このサイトではこのやうに表記していきます。

 

 

 

基本は「主語+謂語(述語)+賓語(目的語)」の形

『孟子・梁惠王章句上』

〔漢〕孟子梁惠王

※「孟子」「粱惠王」は、ともに人名。

 

〔日〕孟子は梁惠王に會つた

この文の形、「主語+謂語ゐご+賓語ひんご」が漢文の基本的な形です。

注目すべきは謂語と賓語の位置。

 

前の記事でもかるれましたが、日本語と逆になることに注意しませう。

先輩と遭つたら…

後輩

先輩

鬼と(ヲニト)つたら返る

 

 

試しに日本語を漢譯かんやくしてみます。

自作・改變漢文

〔漢〕魚。

 

〔日〕猫が魚を食べる。

これだけ。

簡單かんたんだー!

後輩

 

謂語をベースに考へる

謂語が無いパターンは、ほぼありません。

試しに日本語で文を作つてみました。

  • 猫が。
  • 魚を。
  • 猫が魚を。
結局何が言ひたいの!?

後輩

 

漢文ではより深刻で、以下のやうな誤解を招きます。

  • 猫。…「猫です」といふ謂語に見える
  • 魚。…「魚です」といふ謂語に見える
  • 猫魚。…「猫は魚です」「猫の魚です」といふ謂語に見える

孤立語(漢字だけをならべる言語)の漢文は、筆者の意圖いとに反して謂語と誤解されがちなんですね。

謂語は漢文における1つの軸のやうなものだと考へられるわけです。

 

しかし主語と賓語を書かない場合があります。

  • 主語や賓語がなにを指してゐるか、分かり切つてゐるので省略された
  • そもそも賓語が存在しない文型だつた

これらさまざまな要因のため、書きたい内容によつては變化へんくわすることもあります。

 

主語+謂語(述語)の形

張華『女史箴』

〔漢〕高。

 

〔日〕志は大きく義は高い。

2つの文が合體がつたいしたやうな形ですが、内容は簡單かんたんです。

よく見ると、そもそも賓語が存在できない文であることが分かります。

 

以下例文、いづれも賓語を付けるには無理がある文です。

自作・改變漢文

〔漢〕

 

〔日〕山が高い

自作・改變漢文

〔漢〕日本人

 

〔日〕私は日本人です

このやうな文を描寫文べうしやぶんとか判斷文はんだんぶんといひます。

 

つづいて次の文

『史記・老子列傳』

〔漢〕

 

〔日〕あなたは速やかに立ち去られよ

これは賓語を付けることができるけど、省略されたものです。

 

これに無理やり賓語をつけてみませう。

自作・改變漢文

〔漢〕

 

〔日〕あなたは速やかにここを立ち去られよ

「どこから?」「どこへ?」みたいなことは、前後の文脈から明らかなので、この場合は賓語が不要なのです。

 

謂語(述語)+賓語(目的語)の形

『論衡・問孔』

〔漢〕

 

〔日〕食を捨て信義を保つ

これは主語が省略された形です。

なぜ省略されたのかは、上に同じ。

 

先輩

日本語でも「私がそちらに行きます」なんて、毎囘は言はないよね

漢文でも、主語などが分かり切つてゐる場合は積極的に省略すると良いです。

 

謂語だけの文

『戰國策・齊四』

〔漢〕後孟嘗君出記,問門下諸客:「誰習計會,能為文收責於薛者乎?」

馮諼署曰:「。」

 

〔日〕後ほど孟嘗君は記帳を持ち出して、門下諸客に問うた「この中で算法を習つてゐて、書状を作つて貸した金を薛人から取り立てることのできる者は居るか?」

馮諼署が言つた「できます

緑色の所、「能」とだけあります。これは「~することができる」ことを表す動詞であり、謂語です。

 

もし強引に「主語+謂語+賓語」の形にするなら、かう書くでせう。

自作・改變漢文

〔漢〕馮諼署曰:「其務。」

 

〔日〕馮諼署が言つた「私はその任務をすることができます

すごい叮嚀ていねい、だけど…

後輩

先輩

ちよつとクドいわね

 

主語の「臣(わたし)」は、別に書かなくても分かり切つたこと

賓語の「其務」も、前の文から普通に讀み取れます

 

だからこそ、書き手はそれを省略して「能」としたのでせう。

これは漢文を書かうとしてゐる私たちにも應用おうようできる文章です。

 

まとめ

主語 + 謂語ゐご + 賓語ひんご

今囘はこの3つについて書いてみました。

先輩、なんだか漢文法に詳しくなつた氣がするよ

後輩

先輩

後輩ちやんの場合、たぶん氣の所爲だらうけど、日本語を漢文にする時は、この3つの要素を意識してみてね

 

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