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主語 + 謂語 + 賓語
べつに知らなくても感覺で書けるかもしれませんが、漢文を深く理解するには知つておいた方が良いでせう。
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※謂語は述語のこと、賓語は目的語のこと。このサイトではこのやうに表記していきます。
基本は「主語+謂語(述語)+賓語(目的語)」の形
〔漢〕孟子見梁惠王。
〔日〕孟子は梁惠王に會つた。
この文の形、「主語+謂語+賓語」が漢文の基本的な形です。
注目すべきは謂語と賓語の位置。
前の記事でも輕く觸れましたが、日本語と逆になることに注意しませう。
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試しに日本語を漢譯してみます。
〔漢〕猫食魚。
〔日〕猫が魚を食べる。
これだけ。
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謂語をベースに考へる
謂語が無いパターンは、ほぼありません。
試しに日本語で文を作つてみました。
- 猫が。
- 魚を。
- 猫が魚を。
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漢文ではより深刻で、以下のやうな誤解を招きます。
- 猫。…「猫です」といふ謂語に見える
- 魚。…「魚です」といふ謂語に見える
- 猫魚。…「猫は魚です」「猫の魚です」といふ謂語に見える
孤立語(漢字だけをならべる言語)の漢文は、筆者の意圖に反して謂語と誤解されがちなんですね。
謂語は漢文における1つの軸のやうなものだと考へられるわけです。
しかし主語と賓語を書かない場合があります。
- 主語や賓語がなにを指してゐるか、分かり切つてゐるので省略された
- そもそも賓語が存在しない文型だつた
これらさまざまな要因のため、書きたい内容によつては變化することもあります。
主語+謂語(述語)の形
〔漢〕志厲義高。
〔日〕志は大きく義は高い。
2つの文が合體したやうな形ですが、内容は簡單です。
よく見ると、そもそも賓語が存在できない文であることが分かります。
以下例文、いづれも賓語を付けるには無理がある文です。
〔漢〕山高。
〔日〕山が高い。
〔漢〕我日本人。
〔日〕私は日本人です。
このやうな文を描寫文とか判斷文といひます。
續いて次の文
〔漢〕子亟去。
〔日〕あなたは速やかに立ち去られよ。
これは賓語を付けることができるけど、省略されたものです。
これに無理やり賓語をつけてみませう。
〔漢〕子亟去此。
〔日〕あなたは速やかにここを立ち去られよ。
「どこから?」「どこへ?」みたいなことは、前後の文脈から明らかなので、この場合は賓語が不要なのです。
謂語(述語)+賓語(目的語)の形
〔漢〕去食存信。
〔日〕食を捨てて信義を保つ。
これは主語が省略された形です。
なぜ省略されたのかは、上に同じ。
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漢文でも、主語などが分かり切つてゐる場合は積極的に省略すると良いです。
謂語だけの文
〔漢〕後孟嘗君出記,問門下諸客:「誰習計會,能為文收責於薛者乎?」
馮諼署曰:「能。」
〔日〕後ほど孟嘗君は記帳を持ち出して、門下諸客に問うた「この中で算法を習つてゐて、書状を作つて貸した金を薛人から取り立てることのできる者は居るか?」
馮諼署が言つた「できます」
緑色の所、「能」とだけあります。これは「~することができる」ことを表す動詞であり、謂語です。
もし強引に「主語+謂語+賓語」の形にするなら、かう書くでせう。
〔漢〕馮諼署曰:「臣能其務。」
〔日〕馮諼署が言つた「私はその任務をすることができます」
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主語の「臣(わたし)」は、別に書かなくても分かり切つたこと
賓語の「其務」も、前の文から普通に讀み取れます
だからこそ、書き手はそれを省略して「能」としたのでせう。
これは漢文を書かうとしてゐる私たちにも應用できる文章です。
まとめ
主語 + 謂語 + 賓語
今囘はこの3つについて書いてみました。
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