日本の氣象災害の漢譯まとめ(日本語付き)

記録と練習のため、最近日本で起きた氣象きしやう災害について、漢譯かんやくした上でまとめました。

難しい漢字は使はず(いはゆる舊字體きうじたいは除く)、日本語もつけてゐるので、理解しやすいと思ひます。

基本的に官公廳くわんこうちやうの公式發表はつぺうや各メディア報道をソースとしてゐます。記事末のリンク參照。

よく出てくる言ひ囘し
  • 自A至B:AからBまで。AとBには場所や期間などが入ります。
  • 名之曰A:「これを名付けてAといふ」の意味です。颱風にアジア名が付けられた時に使ひます。
  • 東:「~の東・東の~・ひがし」といふ形容詞・名詞のほかに、「東の方へ進む」といふ動詞にもなります。ほか西北南も同樣。
  • 歴:ここでは主に「~を通りすぎて」といふ動詞として使つてゐます。
  • 雨:名詞としての「雨」のほか、「雨降る」といふ動詞にもなります。

平成

卅年、卅一年(自二〇一八年,至二〇一九年四月)

颱風第五號

六月二日氣壓低於帛琉,四日九點爲熱低,八日三點爲颱風,名之曰馬力斯。長而北,歴大東島,而東,十二日衰爲温低。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日乙)〉此颱風使梅雨前綫雨伊豆、大東島。〈據日本氣象協會(二〇一八年六月十一日)〉

6月2日ごろパラオ近海にて氣壓が低くなり、4日9時に熱低となり、8日3時に颱風になり、マリクシと命名される。颱風は發達しながら北上し、大東島を通過し、日本の南を東進し、12日温低になつて去る。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日乙)による。〉この颱風は梅雨前綫に雨を降らせ、伊豆や大東島で大雨となつた。〈日本氣象協會(2018年6月11日)による。〉

颱風第六號

六月十四日生於南支那海,十五日爲颱風,名之格美。之後歴臺灣,近沖繩而東,十七日衰爲温低。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日丙)〉由是沖繩大雨,傷三。

6月14日に南シナ海で熱低が生じ、15日に颱風となり、ケーミーと命名される。颱風は臺灣を經由して沖繩に近づき、太平洋を東進し、17日衰へて温低になる。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日丙)による。〉この颱風は沖繩に大雨をもたらし、3人を負傷させた。

颱風第七號

六月廿七日氣壓低於菲律賓,廿八日九點爲熱低,廿九日爲颱風,名之曰派比安。七月一日廿一點近沖繩縣而北,近北九州,通對馬,入海,衰爲温低。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日丁)〉其害不甚,而交前綫,生西日本豪雨。

6月27日フィリピン東の海上にて氣壓が低くなり、28日9時に熱低となり、29日には颱風となり、プラピルーンと命名される。7月1日21時に沖繩縣に接近して北上し、北九州に接近する。對馬海峽を經由して日本海に抜け、衰へて温低になる。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日丁)による。〉この颱風による被害は少かつたものの、梅雨前綫を刺戟して西日本に豪雨を誘發させることとなる。

七月西日本豪雨

颱風已去來,雨於九州,自五日至八日,梅雨前綫南而横本州,是以豪雨於東西。氣象廳發大雨特別警報長崎縣、福岡縣、佐賀縣、廣島縣、岡山縣、鳥取縣、兵庫縣、京都府。由是死二百卅七,亡八,傷四百餘,壞六千七百,損二萬。〈據内閣府(二〇一九年一月九日)〉川氾土崩,不可勝數。廣嶋、岡山害最甚。死者十七也。廣島縣賀茂川氾,山崩屋壓多。岡山縣眞備小田川、高馬川、末政川、眞谷川決,氾町四一。愛媛縣肱川爲野村壩放水,氾,死五。福岡縣大刀洗川氾。長野縣玉瀧村橋落道崩。北海道石狩川、雨瀧川氾,湧別川橋落道崩。中國一時停電十八萬棟。禾穀耗三千四百圓。旭酒造藏損而喪獺祭,岡山某廠爆發,火二三棟。三菱電機、大發工業、馬自達、松下電器之廠亦損。

先に通過した颱風7號により、九州では雨が降つてゐた。5日から8日にかけて、梅雨前綫が南下して西日本に停滯した。颱風と前綫により西日本から東日本にかけて大雨を降らせた。氣象廳は長崎縣、福岡縣、佐賀縣、廣島縣、岡山縣、鳥取縣、兵庫縣、京都府、に大雨特別警報を發した。これにより237人が死亡し、8人が行方不明になり、400人が負傷し、6700棟が全壞し、20000棟が損壞した。〈内閣府(2019年1月9日)による。〉河川の氾濫、土砂崩れの數は數へきれない。被害は廣島縣、岡山縣で甚だしく、死者は全體の7割であつた。廣島縣の賀茂川が氾濫し、土砂崩れにより多くの家屋が破壞された。岡山縣眞備町の小田川、高馬川、末政川、眞谷川が決壞し、町の4分の1が浸水した。愛媛縣では野村ダムの放流により肱川は氾濫し、5人が死亡した。福岡縣では大刀洗川などが氾濫した。長野縣では玉瀧村の村道が崩落した。北海道では石狩川、雨瀧川が氾濫した。湧別川の橋が崩れ、道も崩れた。中國地方では18萬戸が停電した。この颱風による農林水産被害は3400億圓に上る。旭酒造の藏が被害を受けて獺祭が一時作れなくなつた。岡山の朝日アルミ産業の工場が爆發し全壞し、周邊の民家3棟を全燒させた。他に三菱電機、ダイハツ工業、マツダ、パナソニックの工場が被害を受けた。

颱風第八號

七月二日氣壓低於楚克群島,三日九點爲熱低,四日爲颱風,名之曰瑪莉亞。趣長爲猛,近宮古島、石垣島,歴臺灣,去大陸。由是沖繩人傷二三,田損。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日戊)〉

7月2日チューク諸島近海にて氣壓が低くなり、3日9時に熱低になり、4日に颱風になり、マリアと命名される。颱風は急速に發達し、勢力猛烈になり、宮古島、石垣島に接近し、臺灣を歴て大陸に去る。沖繩縣で數人が負傷し、畑が被害を受けた。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日戊)による。〉

颱風第十二號

七月廿日氣壓低於楚克群島,廿四日三點爲熱低,廿五日爲颱風,名之曰雲雀。歴小笠原諸島,左,廿九日一點上三重縣伊勢市。然後歴中國、九州,去西海大陸。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日己)〉由是有傷卅四;損二百餘。〈據消防廳應急對策室(二〇一九年八月廿日丙)〉此颱風者,逆也。以是皆謂逆走颱風。

7月20日にチューク諸島近海にて氣壓が低くなり、24日3時に熱低になり、25日に颱風になり、ジョンダリと命名される。小笠原諸島にて急に左を向き、29日1時に三重縣伊勢市に上陸した。その後中國、九州を歴て東シナ海に拔け、囘轉しつつ大陸に去つていつた。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日己)による。〉この颱風により、34人が負傷し、家屋200棟餘りが損壞した。〈消防廳應急對策室(2019年8月20日丙)による。〉この颱風は通常とは眞逆の軌道を通つたため、珍しがられ、「逆走颱風」と呼ばれた。

颱風第十三號

八月一日低於馬里亞納群島,二日一五點爲熱低,三日九點爲颱風,名之曰珊珊。北,近關東,而離,東衰爲温低。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日庚)〉無死、傷、損、壞,有交通亂而已。

8月1日頃にマリアナ諸島近海にて氣壓が低くなり、2日15時に熱低となり、3日9時に南鳥島近海にて颱風となり、サンサンと命名される。颱風は北進し、關東に接近した後、離れて東進し、太平洋にて温低になつた。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日庚)による。〉人的・建物被害は無く、交通機關が亂れただけであつた。

颱風第十五號

八月八日氣壓低於關島,十一日爲熱低,十二日爲颱風,名之曰麗琵。然後北,十五日上於宮崎縣日向市,去對馬、海,散。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日辛)〉無死、傷、損、壞,有交通亂而已。

8月8日頃、グアムの東海上で氣壓が低くなり、11日に熱低になり、12日に颱風になり、リーピーと命名される。その後北進して、15日2時に宮崎縣日向市に上陸し、對馬海峽、日本海に拔け、消滅した。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日辛)による。〉人的・建物被害は無く、交通機關が亂れただけであつた。

颱風第十八號

八月十四日十五點氣壓低於沖繩南,爲熱低,十五日爲颱風,名之曰溫比亞。然後歴沖繩縣,去大陸。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日壬)〉

8月14日15時沖繩の南にて氣壓が低くなり、熱低となり、十五日に颱風となり、ルンビアと命名される。その後沖繩縣を歴て大陸に去る。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日壬)による。〉

颱風第十九號

八月十三日氣壓低於楚克群島,十五日爲熱低,十六日爲颱風,名之曰蘇力。北,歴奄美,去朝鮮,衰爲温低於海。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日癸)〉

8月13日チューク近海にて氣壓が低くなり、15日に熱低となり、16日に颱風となり、ソーリックと命名される。その後北進した後、奄美を歴て朝鮮に去り、日本海にて温低になつた。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日癸)による。〉

颱風第廿號

八月十六日廿一點氣壓低於馬紹爾群島,十八日爲颱風,名之曰西馬侖。北,廿三日廿一點上徳島縣南,通内海,再上兵庫縣姫路市,去海,衰爲温低於秋田西。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日甲甲)〉由是,有傷卅五,懷三,損六百。〈據消防廳應急對策室(二〇一九年八月廿日甲)〉淡路島風車仆,京都府東山區大將軍神社木仆,壓其拜殿。靜岡縣濱松市生龍捲,瓦舞。鐵道、航路者休於風中。

8月16日21時にマーシャル諸島にて熱低が生じ,18日に颱風となり、シマロンと命名される。その後北進して、23日21時徳島縣南部に上陸し、一度瀬戸内海を歴て兵庫縣姫路市に再上陸し、日本海に拔けて秋田縣の西にて温低となる。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日甲甲)による。〉この颱風により、35人が負傷し、3棟が全壞し、600棟以上が損懷した。〈消防廳應急對策室(2019年8月20日甲)による。〉淡路島では風車が倒壊した。京都府東山區の大將軍神社では、大木が拜殿を壓し潰した。靜岡縣濱松市では龍卷が發生し、瓦が飛んだ。鐵道・航空は颱風接近中に運航停止した。

颱風第廿一號

八月廿五日氣壓低於馬紹爾群島,廿七日九點爲熱低,廿八日九點爲颱風,名之曰飛燕。之後趣長爲猛,一西一北,微衰,而猶強,九月四日十二點上徳島縣南,歴内海,再上神戸,自若狹灣出海,衰爲温低。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日甲乙)〉其風速甚,多記録改,和歌山市者甚於第二室戸颱風。由是死十四,傷九百八十,壞六十八,損十萬。〈據消防廳應急對策室(二〇一九年八月廿日戊)〉關西有屋停電二百萬餘。〈據關西電力株式會社(二〇一八年九月十日)〉鐵道在近畿者,皆豫休,新幹綫亦然。南海電鐵尾崎站火,暫不能用,關西機場浸,其橋爲某船所觝而破,客子逗五千。害之於禾穀,處處落果,耗四百四十二億圓。〈據農林水産省(二〇一八年十二月七日)〉和歌山縣有近畿大學養鮪,死之二百五十,亡三百五十,耗一億圓。

8月25日ごろにマーシャル諸島にて氣壓が低くなり、27日9時に熱低になり、28日9時にチェービーと命名される。颱風は速やかに發達して猛烈な勢力になり、西進したり北進したりした後、僅かに衰へるものの依然として強い勢力を保つたまま、9月4日12時に徳島縣南部に上陸し、瀬戸内海を歴て兵庫縣神戸市に再上陸し、若狹灣より日本海に出て、衰へて温低になつた。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日甲乙)による。〉この颱風の風速がすさまじく、各所で記録が更新され、和歌山市では第2室戸颱風を上囘る風速を觀測した。この風は大阪灣や紀伊水道に高潮をもたらした。これにより14人が死に、980人が負傷し、68棟が全壞し、10萬棟が損壞した。〈消防廳應急對策室(2019年8月20日戊)による。〉關西では200萬戸あまりが停電した。〈關西電力株式會社(2018年9月10日)による。〉鐵道については、近畿にある鐵道が、みな豫め運休した。新幹綫も同樣である。南海電鐵の尾崎驛では火災により全燒して、しばらくの間使用不可となつた。關西國際空港では滑走路や建物が浸水し、とあるタンカーが空港連絡橋に當たつて破壞され、往來することができなくなつて、空港島に居た5000人が留まつた。農作物における被害は、各所で落果し、442億圓の損害が生じた。〈農林水産省(2018年12月7日)による。〉和歌山縣では近畿大學の養殖マグロが250匹死に、350匹が逃げ、1億圓の被害を受けた。

颱風第廿四號

九月十八日氣壓低於馬里亞納群島,廿日爲熱低,廿一日爲颱風,名之曰山竹。長而北,卅日上和歌山縣田邊市,東而去海,衰爲温低。〈所經,據氣象廳(二〇一八年某月某日甲丙)〉由是死四,傷二百餘,壞六十,損一萬。〈消防廳應急對策室(二〇一九年八月廿日乙)國有屋停電二百萬弱。奄美名瀬灣燈臺仆而沒,沖繩縣琉球金宮觀音菩薩像亦仆,靜岡縣袋井市可睡齋之門壞。埼玉縣百木仆,調神社欅仆壞電柱,使家屋停電五百餘,氷川神社幹枝損屋,箭弓稻荷神社亦然。京都府川氾於某市町,香川縣丸龜城垣崩。鹿兒島縣有近畿大學養鮪,死之三千七百,耗二億圓。前後鐵道、航路,豫休。〈日鐵使首都圈諸綫休,初也。〉

9月18日にマリアナ諸島にて氣壓が低くなり、20日に熱低になり、21日21時には颱風になり、チャーミーと命名される。發達しながら北上し、30日20時に和歌山縣田邊市付近に上陸し、本州を縱斷して太平洋に抜け、衰へて温低となる。〈颱風の進路は、氣象廳(2018年某月某日甲甲)による。〉この颱風により、4人が死亡し、200人あまりが負傷し、60棟が全壞し、1萬棟以上が損懷した。〈消防廳應急對策室(2019年8月20日乙)による。〉全國で停電が200萬棟弱發生した。奄美の名瀬灣では燈臺が倒壞して海に沒した。沖繩縣では琉球金宮觀音菩薩像が倒壞した。靜岡縣の袋井市の可睡齋の總門が倒壞した。埼玉縣では、100以上の木が倒れ、調神社では欅の木が電柱を倒し、500棟を停電させた。氷川神社でも、境内の木の枝が折れ、屋根を破壞した。箭弓稻荷神社でも神木が倒れた。京都府では川が反亂していくつかの町で浸水した。香川縣の丸龜城では石垣が崩れた。鹿兒島縣では近畿大學の養殖マグロが3700匹死に、2億圓の被害を受けた。颱風の前後には、鐵道・航空は事前に運轉を取りやめた。〈JR東が首都圈でも計劃運休を實施したのは初めての事である。〉

令和

元年(二〇一九年,五月以後)

五月十八日大雨

自五月十八日至廿日,濕氣流九州南,大雨。廿日以後寒冷前綫帶東西二日,亦雨。其大者,宮崎縣、鹿兒島縣,而有屋浸。神奈川縣有傷二,鹿兒島縣有傷三。〈事況,據防廳應急對策室(二〇一九年五月廿四日)〉

5月18日から20日にかけて、九州南部で濕つた空氣が流れ込み、局所的な大雨となる。また20日から2日間ほど、西日本と東日本を寒冷前綫が覆ひ、また大雨となる。特に酷かつたのは宮崎縣、鹿兒島縣などで、家屋が浸水するなどした。神奈川縣では2人が負傷し、鹿兒島縣では3人が負傷した。〈事の顛末は、消防廳應急對策室(2019年5月24日)による。〉

六月廿九日大雨

六月廿九日以後,爲梅雨前綫與低氣壓,大雨於西南。至七月,梅雨前綫帶東西數日,而雷雨。由是,七人死於鹿兒島縣,損壞五百棟。〈事況,據防廳應急對策室(二〇一九年七月卅一日)〉

6月29日以後、梅雨前綫と低氣壓のため、西日本の南部で大雨となる。また7月の初旬、西日本と東日本を梅雨前綫が覆ひ、雷雨となる。この雨により、鹿兒島縣で7人が死亡し、500棟あまりが損壞した。〈事の顛末は、消防廳應急對策室(2019年7月31日)による。〉

颱風第五號

七月十一日氣壓低於加羅蓮群島,十四日九點爲熱帶低氣壓於雅浦島,十六日十五點爲颱風於菲律賓東海,名之曰丹娜絲。之長而北,歴石垣島,去朝鮮,然後衰爲温帶低氣壓。颱風不上我,生九州綫状降水帶,氣象廳發大雨特別警報於對馬、五島。〈據氣象廳(二〇一九年七月廿日)〉無死,而崖崩石落廿四件。〈據國土交通省(二〇一九年七月卅一日)〉

7月11日ごろ、カロリン諸島で氣壓が低くなり、14日9時にヤップ近海にて熱帶低氣壓になり、16日15時にフィリピンの東の海上にて颱風になり、ダナスと命名される。この颱風は成長しつつ北進し、石垣島を通過して朝鮮に向ひ、その後衰へて温帶低氣壓になる。颱風は上陸しなかつたものの、九州に綫状降水帶を生じさせ、氣象廳は對馬と五島に大雨特別警報を發した。〈氣象廳(2019年7月20日)による。〉人的被害は無かつたが、崖崩れ等が24件發生した。〈國土交通省(2019年7月31日)による。〉

颱風第六號

七月廿四日六點,熱帶低氣壓生於沖之鳥島而北,廿六日九點爲颱風於和歌山縣潮岬南海,〈據氣象廳(二〇一九年七月廿六日)〉名之曰百合。廿七日七點上三重縣南,然後爲熱帶低氣壓於岐阜縣,〈據氣象廳(二〇一九年七月廿七日)〉歴關東而東,散於洋。建元以來,颱風上我,初也。處處大雨,栃木縣佐野市屋損於風九十。〈産經新聞(二〇一九年七月廿七日)云:「宇都宮地方氣象臺以爲龍捲。」〉

7月24日6時に沖ノ鳥島近海にて熱帶低氣壓が生じて北進し、26日9時に和歌山縣潮岬の南の海にて颱風となり、〈氣象廳(2019年7月26日)による。〉ナーリーと命名された。27日7時三重縣南部に上陸した。その後岐阜縣にて熱帶低氣壓となり、〈氣象廳(2019年7月27日)による。〉關東を歴て東進し、太平洋に去つて消滅した。改元以來、我が國に颱風が上陸するのは初めてである。各地で被害があつた。栃木縣佐野市では、風によつて90件の建物が損じた。〈産經新聞(2019年7月27日)によると「宇都宮地方氣象臺は『龍卷の可能性が高い』としてゐる。」〉

颱風第八號

八月一日氣壓低於南鳥島,十五點爲熱帶低氣壓,二日長爲颱風,名之曰范斯高。四日歴小笠原諸島而西,加長,六日上宮崎縣宮崎市,而歴對馬,去朝鮮,然後衰爲熱帶低氣壓、温帶低氣壓。大分縣有人死於風。〈事況,據防廳應急對策室(二〇一九年八月一三日)〉

8月1日に南鳥島近海で氣壓が低くなり、15時熱帶低氣壓になり、2日には颱風となり、フランシスコと命名された。4日には小笠原諸島に接近してさらに西進した。5日以後、更に發達して強い勢力となる。6日には宮崎縣宮崎市に上陸した。そして對馬海峽に拔けて朝鮮に去つて、衰へて熱帶低氣壓・温帶低氣壓となる。大分縣で1人が死亡した。〈事の顛末は、消防廳應急對策室(2019年8月13日)による。〉

颱風第十號

八月五日生熱帶低氣壓於馬里亞納群島,六日爲颱風,名之曰羅莎。自八日至十一日,停小笠原諸島,一長一衰,北,十五日歴豐後水道,上廣島縣呉市。〈據氣象廳(二〇一九年八月一五日)〉新幹綫、在來綫、飛機,皆停。〈據産經新聞(二〇一九年八月十五日)〉此間徳島阿波踊止。〈據朝日新聞(二〇一九年八月十四日)〉然後北去,衰爲温帶低氣壓。由是死二,傷五十七,損壞廿棟。〈據消防廳應急對策室(二〇一九年八月廿日)〉

8月5日に熱帶低氣壓がマリアナ諸島に生じ、6日に颱風となり、クローサと命名される。8日から11にちまで、小笠原諸島にて停滯し、發達したり衰へたりしつつ、北進し、15日豐後水道を通過して、廣島縣呉市に上陸した。〈氣象廳(2019年8月15日)による。〉新幹綫と在來綫は運休し、飛行機も幾つか缺航した。〈産經新聞(2019年8月15日)による。〉阿波踊りはこの間中止となつた。〈朝日新聞(2019年8月14日)による。〉その後北に拔けて、衰へて温帶低氣壓になつた。この颱風により、2人が死亡し、57人が負傷し、住宅20棟が損壞した。〈消防廳應急對策室(2019年8月20日)による。〉

八月廿七日北九州大雨

八月廿七日暖風、濕氣使前綫雨,北九州暴雨,廿八日六點氣象廳發特別警報於佐賀縣、福岡縣、長崎縣。由是死四,傷二,損壞百強。佐賀縣某廠藥油流。〈事況,據防廳應急對策室(二〇一九年十月四日)〉

8月27日暖かく濕つた空氣が前綫に雨を降らせ、北九州にて局所的な大雨が降り、28日6時ごろ氣象廳は佐賀縣、福岡縣、長崎縣に大雨特別警報を發した。これにより4人が死亡し、2人が負傷し、100棟強が損壞した。佐賀縣では劇藥や油が流出した。〈事の顛末については、消防廳應急對策室(2019年10月4日)による。〉

颱風第十五號

八月卅日未明,熱帶低氣壓生於馬紹爾群島近海,而西,五日十五點爲颱風,名之曰法茜。颱風歴小笠原、神津島,加長。八日氣象廳會見,警曰:「將上靜岡。此颱風小,晩則世界當變。」〈據長坂哲夫(二〇一九年十月十日)〉九日三點歴三浦半島,〈據氣象廳(二〇一九年九月九日)〉入東京灣,五點上千葉縣千葉市。強勢而上關東,稀也。〈氣象新聞公司(二〇一九年九月九日)云:「其勢最強於關東。」豫報員森田正光(二〇一九年九月九日)云:「蓋名之曰東京灣颱風!」〉氣象廳發暴風警報於關東、東北諸縣。關東固少風,故其害甚,死一,傷百四十八。〈據消防廳災害對策室(二〇一九年十月四日)〉東京都世田谷區五十幾歳婦,躓於風,打頭而死。〈據朝日新聞(二〇一九年九月九日甲)〉千葉縣大多喜町八十幾歳翁,伐木而爲其所壓,死。〈據朝日新聞(二〇一九年九月九日乙)〉埼玉縣八十八歳翁,躓折左足,千葉縣九十九里濱少年等,離岸,或死或救。已霽,由停電中暑死多。

8月30日未明、マーシャル諸島近海で熱帶低氣壓が發生し、西進した後、5日15時に南鳥島近海にて颱風になり、ファクサイと命名される。颱風は小笠原近海を通過し、神津島付近にて再發達した。8日氣象廳は會見を開き「颱風はまさに靜岡に上陸しようとしてゐる。この颱風は小型であり、夜になれば世界が變はるだらう」と警告した。〈長坂哲夫(2019年10月10日)による。〉9日3時ごろに三浦半島を通過し、〈氣象廳(2019年9月9日)による〉東京灣に入つて、5時に千葉縣千葉市に上陸した。この時の勢力は「強い」であるが、關東に上陸した颱風としては過去最強クラスである。〈ウェザーニュース(2019年9月9日)は「關東では過去最強クラス」と言つた。雅虎新聞森田正光(2019年9月9日)は「この颱風を東京灣颱風と命名してはどうか」と提案してゐる。〉關東ではもともと颱風被害が少なく、故に大きな被害が發生し、死者1人、負傷者148人。〈消防廳災害對策室(2019年10月4日)による。〉東京都世田谷區では50代の女性が轉倒して頭を打つて死亡し、〈朝日新聞(2019年9月9日甲)による。〉千葉縣大多喜町にて、80代の男性が倒木を撤去する際に木の下敷きになつて死亡した。〈朝日新聞(2019年9月9日乙)による。〉埼玉縣では88歳の男性が轉んで左足の骨を折り、千葉縣九十九里濱では未だ波浪警報が解除されてゐない海で泳いでゐた少年が流され、一人は死亡し、一人は助かつた。颱風が過ぎた後でも、熱中症により多くの人が死亡した。
千葉縣災情

此颱風害關東,千葉殊甚。無死而傷八十一,屋壞二百弱,損三萬餘。損壞之於此,十八也。〈據内閣府(二〇一九年十月十日)〉風損設備,停電五十四萬棟,近郊疾通電,遠郊遲,以不可通路也。電信亦然。〈據朝日新聞(二〇一九年九月十一日)〉一月之後,未恢而颱風復來也。

この颱風は關東各地に猛威を振るつたが、特に千葉縣においては被害が甚大であつた。死者は無かつたものの、81人が負傷し、家屋は全壞200弱、半壞や一部損壞は30,000戸以上で、この地域における損壞數は、全體の8割である。〈内閣府(2019年10月10日)による。〉暴風によつて各地の電氣設備が損じ、54萬戸が停電する事態になつた。市街地などは迅速に電力が恢復したものの、山間部などでは遲れた。道が被害を受けて通れなかつたためである。インターネットも同樣である。〈朝日新聞(2019年9月11日)による。〉そして1ヶ月の後、復舊が終はらぬまま次の颱風が來ることとなる。

 

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